いつものようにHEIYUで買い物。
 いつもと違うのは、アンナとまん太が葉に付いてきていること。
 3人で買い物。これは滅多にないことだ。


 02.階段


 「何で3人なんだろうね…?」
「決まってるでしょ。あんたたちは荷物持ちよ」
「うえっ。そうなんか、やっぱ」
「まぁ、いいけどね、いまさら」
 まん太はぽてぽてと歩いて、HEIYUの入り口に向かう。
 突然、入り口手前の小さな階段でつまずきそうになっているまん太を見て、葉は笑った。
 「まん太〜気ぃつけろよ〜」
「なにもそんなに笑わなくてもいいじゃないか…」
「まったく…。ホント、気をつけなさ…」
 そう言いかけたアンナが、まん太と同じ所でつまずきかけた。
 「きゃっ」
 とっさに腕を伸ばした葉につかまり、アンナはバランスを保つ。
 「…っと、びっくりしたー。ココつまずきやすいんかな? 大丈夫か、アンナ」
「ええ…」
 アンナは心底驚いたのか、必死に葉につかまっている。
 「アンナさんと僕との扱いがものすごく違わなくない?」
「んなことはないだろう」
 大いにそんなことはあるのだが、葉はすっとぼける。
 「…? アンナさん? 大丈夫?」
 まだ葉にしがみついているアンナを見て、まん太が心配そうに聞いた。いつもなら外で必要以上に葉と近づくのを避けているアンナが、長い間しがみついているのは異様な光景だ。
 「…大丈夫よ」
 そう言って、アンナはようやく葉から離れた。
 「さ、行くわよ」
「お、おう」
 すたすたとHEIYUに入っていくアンナの後ろ姿を見て、葉とまん太は不思議そうに顔を見合わせた。
 
 「う〜ん…今日の晩メシ何にすっかな〜。まん太、お前何食いたい?」
「うーん…久々の葉君の手料理だし…。やっぱり、僕が好きなシチューかな」
「おお、最近食ってねぇや。うまそうだな。アンナ、それでいいか?」
「何だっていいわよ」
「…うえ? ちょっと不機嫌だな。大丈夫か?」
「…」
 返事がないのが不安を誘う。「もち!」とでも返事が返ってくるかと思ったのだが。
 「アンナ?」
「大丈夫よ。心配なんかしてないで、さっさと材料選びなさい」
「お、おお」
 「――何か、アンナさんの様子変だよねぇ?」
「う…ん」
 首をひねりながら、葉は野菜を選んでいる。
 にんじんを手にとって、選んでいる風ながらも、ちらちらと横目でアンナの様子をうかがっていた。
 アンナはと言えば、ボーっとゴーヤを眺めている。
 「あのゴーヤの歌、すごく変じゃない?」
「お、おお。変だな、アレ」
 麻倉夫婦の意味のない会話を聞きながら、まん太は首をひねっていた。
 
 飲み物売り場に来たとき、突如夕食に合う飲み物の話になった。
 「シチューはいいけど、カレーに炭酸飲料ってのはいかんよなぁ。舌がヒリヒリする」
 今夜飲もうとするジュースを選びながら、葉が言う。
 「ああ、そうだよね。あと、案外お茶も合わないんだよね、カレーって」
「そうか? 茶はいいんじゃねぇの?」
「何言ってるんだい。水でしょ、やっぱ」
 ミネラルウォーター・“ロッキーのおいしい水”をバッと前に出してまん太が言う。
 「いや、茶もいける!」
 葉は対抗して“お〜い粗茶”をバッと前に出す。
 「なぁ、オイラたちはいつもこれだよな、アンナ?」
 葉がくるっと振り返ると、アンナはふたりのくだらない言い争いには興味がなかったらしく、飲み物売り場の一角をじっと見ている。
 「んん? コレ飲みたいんか?」
 葉がその棚に近づくと、小さなペットボトルに“りんご”の文字。――ああ、りんご好きだかんな、アンナ。
 77円…割と安いなぁなんて考えていると、まん太が気付いたように言った。
 「ねぇ、それって離乳食用の飲み物って書いてあるよ」
「う、うえっ!?」
 葉があわててパッと手を放す。
 「本当だ…。この辺全部離乳食用じゃんか…」
「やたら量が多いよね…」
 まん太が棚を見上げながら言う。
 「ふんばりが丘に、これだけの量が必要とされるほど、赤ちゃんがいるとも思えないんだけどね。…て言うかほとんど見ないよね」
 そう言って笑う。
 「おお…そうか、な?」
「…――すぐに必要になるわよ」
 アンナのそのひとことで、その場の空気が一瞬固まった。
 「…ぅえ…? アンナ、今なんて…」
「…!?」
 まん太は耳を疑った。も、もしや…。
 た、確かに、そう考えれば…。
 さっきアンナが階段でつまずいたときに、ものすごくおびえた表情をしたのも納得がいく。けれど…まさか…――。
 「ちょっ…アンナ…話を、きかせてくれ」
 葉も考えが一点に集中しているらしく、ひどく動揺している。
 「え、えと、まん太は、菓子コーナーでも見ててくれないか?」
 …何でお菓子コーナー?
 この場合、親友をツッこむべきか放っとくべきかで、まん太は少し悩む。
 けれど葉はそれどころではないらしく、アンナの肩を抱いて話に集中している。
 まん太はそんな親友夫婦を眺めてから、葉の言葉通りに素直にお菓子コーナーへと足を運んでいた。
 まだ若いながらに、着々と大人への階段を上っていく友人を思って…。
 ――まん太は友人として、心底先行きを不安に思うのだった。



2003.5.31






懺悔。

花くん発覚編(笑)。
えーと、コレは…
SEIY○(ほとんど伏せてないし)で
実際に離乳食用の飲み物がやたらと積んであったのを見て(しかもレジ横)
「こんなに子持ちがいるのか…?」
と疑問に思い、そこから発展(笑)77円は事実です。
SEIY○のゴーヤの歌、存在を知っている方がいらっしゃるんでしょうか…?
不思議です、あの曲は。

つーか麻倉夫婦…カレーには「お〜い粗茶」なんだ…。

まん太の呟き。=私の冷静なツッコミ。
あなたたち、若いのにいきいそぎすぎです。
親友でなくても先行き不安になるってモンです。

…でも子作りに精を出して下さい。
(って、まんまじゃんか、それ)
……ごめんなさい、さいてぇっす。