ハードデイズ・ホリーナイト
今日、オイラはなぜか学校にいた。おまけになぜか、補習を受けさせられていた。朝から数学や英語のプリントを何十枚もやっとる(…様な気がするだけかも知れんが)。少なくとも10枚以上はやっとるよなぁ、これは…。
「お前、成績ヤバイからな。補習受けなかったら留年だぞ」
と担任に脅され(?)、アンナにも「おバカッ!」と怒られ、しぶしぶこうして学校に足を運んだ。
去年のクリスマスは楽しかったなぁ。
みんなでどんちゃん騒ぎだったし、でっけぇツリーなんかも(どっから持ってきたんか知らんが)飾ってあったし。
花のやつも生まれて初めてのクリスマスで…ツリー見て目ぇ丸くしとったな、ウェッヘッヘ。
けど今年は補習かぁ…。本当なら親子三人でまったりする予定だったんだけどなぁ。
帰りてぇな…。
いや、まぁ帰ったら帰ったであいつに怒られるだろうけどさ。
帰らなかったら帰らなかったで、寂しい思いをしてそうなんよな、あいつの場合。
担任も何もこんな日に補習入れんくてもさ…いいと思うんだが。
「せんせぇ……オイラ、可愛い嫁さんと息子が待っとるんで、帰りたい」
「なに寝ぼけたこと言ってんだ、んなくだらねぇ嘘つくくらいならとっととそのプリント仕上げろ!」
「――いや、嘘じゃねえんだけど…」
担任はオイラの言葉を無視して、更に言い続ける。
「だいたい、可愛い嫁さんと娘が待ってんのは俺の方だ! そもそもお前が期末で赤点ばっか取るから俺だって今日学校に来なきゃならなくなっただろうが、さっさと帰らせてくれ!」
と、今度は担任の方に涙目で訴えられたので、オイラはそれ以上何も言えんくなって頭を掻いた。
悪い事したなぁっつう気分と、嫁と子どもを待たしとる気持ちが分かっとるんなら解放してくれって気持ちが半分半分流れた。
でもまぁ、自分でまいた種――と言えん事もない。ので、そのあとは黙ってプリントに向かった。わからねぇところが大半だが、こうしてつき合ってくれとる先生にも悪いし、どうやらこのプリントさえ何とかすれば留年は免れるそうなので、向き合う。
何度か意識は家に飛んだ。アンナは何やってるんだろうかとか、花は寂しがってねぇだろうかとか、ふたりでどんな風に過ごしてるんだろうとか……。
手が何度も止まったが、頭を振ってなんとか問題を解いていく。
あたりが暗くなってきた頃に、ようやく最後の一枚を仕上げた。
「で…できた……」
ぐったりし、朦朧とした頭ん中で「やっと帰れる」って浮かんだ言葉だけが救いだった。
眠りかけとった担任はオイラの声でハッと目を覚まして、プリントを受け取る。
「はァ…これでやっと帰れる……」
「ス、スミマセン」
冷や汗を流しながら、一応謝っておく。
「オイラこれで帰ってもいいんかな?」
「おお」
先生はお疲れさん、とひとこと言った。
「来年からはもう少し何とかしろよ、お前」
「うい…」
教室を出ようとする後ろ姿に、オイラは慌てて声をかけた。
「あ、なぁ先生!」
「ん?」
「先生さ、早く帰って嫁さんと子どもに会いてぇ?」
「…」
オイラの言葉に目を丸くしたあと、担任は照れた様に笑った。
「バッカ、くだらねぇこと聞いてねぇで、お前も彼女くらい作れ」
「はは…」
適当に笑ってごまかしながら、オイラは教室を出て行く担任の後ろ姿を眺めた。きっとまったりしたっかんだろうな…すまん、先生。
しかしそれはオイラも一緒だ。筆箱をひっつかんで、鞄に適当に詰め込む。
早く帰ろう、きっと嫁さんと息子が待っとるから。
暗い空の下、足早に歩く。光るイルミネーションを突き抜け、家族が待つ家に。
手を繋いだカップルたちがいる横もすり抜け、ひたすら家を目指した。プレゼントも何も持ってねぇけど、こんなに暗くなっちまったけど…。
寂しがりやな嫁さんに、帰って優しく口づけをしよう。たまにはそんなのも悪くない。
オイラはガラリと玄関を開けて、叫んだ。
「ただいまー!」
懺悔。
甘くもなくオチもない話ですみません。
何となく、離れたところから家族を思う葉が書きたかった。あと、
「オイラ、可愛い嫁さんと息子が待っとるんで、帰りたい」
ってセリフを言わせたかっただけ。(笑)
家族バカンな旦那でいいじゃないか!(え)
そしてまたもや曲から取りました。
「Hard Days, Holy Night」。ポルノグラフィティの曲より。
ホントは新社会人が恋人の元へ走る歌だけど。
…にしてもプリント課題こなしたら留年免れるなんて事あるのかなぁ…。
なかなか良心的な学校だ。
まぁ留年ギリギリになる前に、嫁があめとむちを使って何とかしてそうだけど。(あめ:むち=9:1くらいで。)