夜はお静かに 後編
「一緒に…暮らす――って?」
オイラはアンナから告げられた言葉に、目を丸くした。
まん太はもう家に帰っていたが、オイラは一応もうしばらく、様子見で入院せんとならんかった。まぁ三日も眠りっぱなしだったんじゃ仕方ねぇけどよ。
日が沈みかけ、窓から入る光がオレンジ色になってきても、ベッドの横の丸椅子に座って一向に帰る気配のないアンナに、どうすんのかと尋ねてみた。したら「あの幽霊屋敷に一人でいろっていうの?」つう返事が返ってきたんだ。幽霊屋敷って…炎?
って、一緒に暮らすんか、オイラたち!?
「当然じゃない。あんな広い家、あんただけが住んでたって持てあますでしょ」
「いや、そりゃ空き部屋はあるけどよ…」
しかし……一緒にって…。
「それじゃあ…しばらくこっちにいられるってことか?」
「まぁね。少なくとも夏休み中はあんたに修行つけないと」
「う……」
修行…――は、とりあえず頭から追い出して。
「とにかく、一緒に暮らせるんだな?」
「まあね」
アンナは少し頬を染めて、目をそらした。そんな姿を見て、自然に頬がゆるむ。
「そうかー…一緒に――」
「あんたが突然入院なんかするから。まったく、あたしに心配かけんじゃないわよ」
「す…すまん」
まぁそのおかげでこうしてアンナと会えて、おまけに許嫁にまでなれたんだから、蓮って奴に一応感謝しとこう。
「それより、今日炎に帰らねぇならどうするんよ?」
「ココに泊まるのよ。安心して、医者の許可は取ったから」
素早いな、アンナ……。そういやいつの間にかベッド横に長いすが置かれている。
…コレで眠るには、そうとう身体を縮めんとならんのじゃないか?
横目で、その茶色い長いすを見た。
――病院っつう所は、のんびりしているような、それでいてせわしいような、奇妙な場所だ。昼間はこれでもかっつうくらいに時間がゆっくり進むんだが、夜9時にもなれば電気はあっという間に消されていく。音が消え、一瞬にして、夜が来る。
ベッドをぐるりと囲むカーテンが引かれて、その一時的な狭い空間にオイラとアンナのふたりだけになった。
「ン……」
唇を合わせると、少しだけ声が漏れた。
小さな豆球の光のもと、揺れるカーテンの中。お互いの熱がこもって、妙にねばりけのある欲がオイラを酔わそうとしている。
動けば、ベッドがぎしりと音をたてる。
病人とは名ばかりで、まったくもって元気なオイラは、背に腕を回してゆっくりとアンナを倒した。
「…こんな元気な病人、知らないわ」
「まぁいいじゃねぇか」
小声で話し、アンナにのしかかって深く口付ける。
「ん…ぁっ……ちょっ…と、本気なの?」
「なにが」
「何がじゃないわよ、本気でするつもり? 病院よ、ここ。しかも相部屋」
まぁ、もっともな意見だが。
「いいんじゃねぇ? 静かにやってれば気付かれんだろ」
同室の人間はじいさんぐれぇだ。耳も遠いし、大丈夫だろう。(夕食ん時に確認した。)
何より、オイラが抑えんのが無理だ。
「オイラの嫁さんになってくれるんだろ?」
「……っ」
赤くなるアンナの首筋に唇を這わせると同時に、ワンピースのチャックに手をかける。少し身を強ばらせるが、オイラが本気だと分かったらしく、アンナはおとなしくなった。
あの時、あの夜初めて抱いたあのあと、感じた不安は何だったんだろうと思うほど、オイラはあっさりアンナを求めた。会えば自然と沸き上がった欲。また触れたいと手を伸ばせば、簡単に届く場所にアンナがいる。オイラは強くなんかなくて、まだまだ全然弱くて。アンナを守るなんてほど遠いけど、でもこの気持ちはごまかせなかった。欲しいもんは欲しいと、口に出して言ってしまえば案外と楽なもんだ。そう思った。
見慣れたこの黒いワンピースも、よくよく考えりゃ脱がすのは初めてだな。いや、前回の浴衣だって、アンナが脱いでくれてたようなもんだけどよ…。
先にアンナを倒しちまったもんだから、脱がしにくくてしょうがない。不慣れなんは自分でも仕方ねぇとは思うが、手順ぐらいは考えとくべきだった……と、少し汗ばむ頭で考える。
それでもやっとの事で脱がすと、アンナが軽く笑った。
「ごくろうさま」
「む…」
何か、アンナの方に余裕があるみたいでしゃくだな…。まぁ仕方ねぇけどよ。
「さぁ、これからどうするつもりなの、旦那さま?」
下着姿のアンナが、いたずらっぽく言う。今の呼ばれ方に、妙にいい気分になった。けどアンナがそんな挑発的なもの言いをする理由が分かっているので、その"いい気分"を味わえねぇ。――この、初めて見るもんに、オイラは戸惑った。
「なぁ…コレ…どうやってはずすんよ?」
ブラジャーのひもをくいっと引っ張りながら情けない声を出す。どういう構造なんかイマイチ分からん。
ひもを肩からずらす? でもそんなコトしたって脱がせるんかな……。指でいじりながら悩んでいると、アンナがその腕を取って、ゆっくりと起きあがった。その動作が妙に色っぽくて、オイラはその細く艶めかしい腰つきや、投げ出された白い足に思わず目を奪われる。アンナの身体を見つめていると、アンナがオイラの両手をとって、ゆっくりとその手を背中へとまわさせた。
「ホック。はずして」
「お、おお」
抱きしめる形でそのホックとやらを探る。――何だ、これは、よくわかんねぇぞ? ああでもねぇこうでもねぇといじってると、ぽろりと金具がはずれた。
「おお、はずれたぞ、アンナ」
オイラの腕の中、アンナがクスクスと笑う。
「じゃあ脱がしてよ」
「おお…そうだな」
確かに、オイラがしたかったんはコレをはずすことじゃなくて、そん中に隠れてるアンナの胸に触れることなんだが…。こうやって抱きしめながら脱がす行為も悪くねぇな、なんて思ってる自分がいる。
ひもがごちゃごちゃしててよく分からんが、何とかそうっと脱がすと、それを長いすに放り投げた。――アンナは本当に、あんな狭いイスの上で寝るつもりだったんか? 最初から一緒に寝てくれるつもりだったんじゃねぇかと、少し期待した。聞いたらビンタ食らうから口には出さんけどよ。
ようやく姿を見せた小さな胸に手で触れて、その何とも言えん柔らかさを懐かしみながら、そっと口付ける。ピクリと震えるから、気分が良くなった。さっきまでからかわれてたしな。
「アンナ…気持ちいいんか?」
「な…なに言ってんの……っぁあんっ」
舌先でその突起を舐めると、アンナから可愛い声が漏れた。気をよくして、唇も使って突起をいじる。
「ん……ょ…う……」
「アンナ…あんま声出すなよ? 聞こえちまうし…」
本音を言えばアンナの声はききたくてたまらねぇんだが、この静かな空間には響いて仕方がない。
「だったら…こんなトコでしなきゃいいじゃないのっ……ぁんっ」
そういうわけにもいかんのが男ってモンでよ。第一アンナだって、ここで止めるって言われても、困らんか? 中途半端なままで…オイラは止められそうもない。オイラのソレは、アンナを求めてじりじりと焦がれとる。
一度離れて、自分の服一切合切脱ぎ捨てて、アンナの下着にも手をかけた。
少し恥ずかしそうに身を震わす姿がかわいい…と思うオイラの思考は、正常なんだろうか?
アンナはオイラが脱がしやすいようにと、オイラの首にぎゅっと抱きついて身体を浮かしてくれた。そんなそそられる格好にドキドキしつつも、どうしようもないほど乱暴でむきだしの欲が、じわじわと押し寄せてくる。早く、その浮き上がる腰を掴んで、足を開き、その奥に自分を突き立てたい。
奇妙な汗が、オイラの全身を流れた。
足を通し、脱がせきって、またそれを長いすにほうり投げた。
もう一度布団の上にアンナを押し倒し、覆いかぶさるように跨る。ベッドがぎしぎしと悲鳴を上げた。
腕を頭上にやって、アンナの指に自分の指を絡め、口付けた。
「ん…っ」
歯列を割り、舌を差し込んで絡めれば、アンナの小さな舌もためらいがちに応えてくれる。
もう立ち返ることなんて考えもしない。口内をかき回しながら、ひたすらアンナを求めた。
音をたてないように、静かに。ねっとりとした熱い感触に酔う。
アンナの全てを感じるように、肌を合わせ、ひたすらそのぬくもりを感じとろうとする。あの時よりも数段暖かな外気が、オイラたちを包んでいた。
太股を掴んで、その身体を寄せる。乱暴に足を開かせる。足と足の間の熱い場所に触れ、指を差し込めば、粘りけのある液体が、じりじりとオイラを待ち受け、絡みついた。ピクピクと動くソコは、やっぱり、いつも見るアンナとは何か別の意志を持って、オイラを快楽へ導こうとしている。オイラのモノも、アンナを求めて痛いほど大きくなっとった。
「…いれるからな、アンナ」
耳元で小さく囁くと、アンナがキュッと身体を縮めて、吐息のような弱々しい返事をした。
オイラは、既に出したくてたまらないと主張している自分のソレを掴んで、アンナの中にぐっと挿し込んだ。
「ぁあっ……!」
一段と高い声がアンナの喉奥から漏れ、オイラは慌てる。けど静かにしろ、なんて言うのも酷なんはじゅうぶん分かっとるから、おろおろとした挙げ句に自分の口をぐっと押し当ててアンナの声を飲み込んだ。
「むぅ…っ」
両方の口をオイラに犯され苦しいのか、アンナは涙を浮かべて、逃れようと身をよじらせた。ベッドがギシッと音をたてる。その反動でオイラのソレはぎゅっと締め付けられて、今すぐに中に吐き出したい衝動に駆られた。
「ァ…アンナ……っ」
更に快感を得ようと、腰を前後に動かし、奥を突いて、退いてはまた突く。その動きにあわせ、ベッドの音が鳴り響いた。
「んんっ…あっぁああっ……」
オイラにしがみつきながら、アンナは抑えきれずに声を出す。オイラは無意識にアンナの唇を追い求め、塞ごうとし、その一方で震えながら中に熱い液を注ぎ込んだ。
アンナはオイラの精液を飲み込み、オイラはアンナの声を飲む。
音を殺した、静かな繋がり。それでも確実に、小さな音を奏で絡みあう接合部。
けだるい感覚に身を投じながらも、身体をぶるぶると震わせ溢れてくるアンナの液に、オイラは汗ばむ意識の中、そっと微笑んだ。
――翌朝。
誰かが起こしに来る前に、オイラたちは起きあがって服を着て、その後しれっとした顔で朝食が運ばれるのを見ていた。
同室のじいさんは朝方ごそごそと何かをしていたが、オイラのじいちゃんも朝が早いし、たぶんみんなこんなもんなんだろう。夜はぐっすり寝ていたらしいので安心する。
身体に特に異常もないので、オイラは即日退院になった。
アンナと一緒に、「同じ家に帰る」ってのがひどく嬉しくて、おまけに昨晩のこともあって、オイラの頬は緩みっぱなしだ。
「なにユルイ顔してんのよ」
とアンナが言うんで、前者の方だけ話したら、小さな笑顔が見れたもんだからオイラはますます嬉しくなった。
アンナが来て。許嫁になって。同じ家で。
修行…は…――まぁ仕方ねぇな…。逃げられそうもねぇし。これもオイラの夢のひとつだと思い、ふんばるしかない。
それからもうひとつ……オイラには、夜の楽しみが増えた。
霊たちに感づかれても困るから、やっぱり、夜は静かに。
アンナの唇を求めながら、静かに――また、アンナと音を奏でる。
懺悔。
強くなりたい、そう思って、でも結局まだまだ弱くて…
でも再会すれば、そんなのそっちのけで相手を求めるんだ…っていう話が書きたかったんです。(笑)
個人的には、アンナに触れることに対して
葉さんにはもっとビクビクして貰ってもよかったんですが……
まぁいっそラブラブでもいっかー…と。(笑)
深く考えずにあっさり繋がる、そんなのも良いかと。
にしても病院…
このシチュエーションはどうなんだろう。(笑)