あいびと



 お昼のワイドショー。あたしはボンヤリ見ながら、寝っ転がってせんべいを食べていた。
 珍しく横に葉もいる。ボーっと眺めて、ほうけた顔をしている。番組の内容は「○○の浮気発覚」とかそんなもの。ねぇあんた、見てて楽しい?
 「なぁアンナ、オイラ不思議だったんだけどさ」
 今まで黙ってみていた葉が、不意に口を開いた。
 「あのさ、なんで浮気相手とかが「愛人」なんだろな?」
「はぁ?」
 意味が分からず、あたしは聞き返す。「何が言いたいの」
 「だってよ〜、「愛」する人で「愛人」だろ? 何でそれが浮気相手になるんよ」
「さぁ? 別に浮気相手に限定するわけじゃないでしょ」
 そんなことはどうでもいい。それよりも問題は。
 「あんた、いきなりそんなこと言うなんて……まさかどこかに囲ってる女がいるんじゃないでしょうね」
 愛人がいたら、ただじゃおかないわよ。葉を思いっきり睨みつけてやる。
 「ばっ……何でそうなるんよ!」
 汗をだらだら流しながら、葉が否定する。
 「だいいち、中学生に何が出来るって言うんよ……」
「あたしたちが夜してるようなこと」
「アンナ……っ」
 葉は赤くなったり青くなったり、既にどういう理由か分からなくなった汗が滝のように流れ落ちる。
 「じゃあ何なのよ」
 葉の様子から、別に浮気をしていないらしいとわかり、改めて尋ねてみる。
「何で突然「愛人」がどうのと言いだしたの」
「んー…いや、オイラたちって何だろうって考えたときにな」
 葉はそう言って、まじめな顔をして首をひねる。
「なんか恋人っつー響きもしっくり来んし、かといって許嫁ってのはいかにも親が勝手に決めた感じがするし」
 婚約者ならまだしっくりくるなぁ、とひとりでうんうん肯いている。
 「んで、夫婦っつーのもなんか早い気もするしよ」
 なんでこんなことマジメに考えてるのかしら、この男。
「でよ、「恋人」がしっくり来んかったんは、「恋」つう次元は越えちまってるからなんかなぁとか考えたんよ」
 今度は照れて頬まで掻いている。何よ、普段言ってくれないくせに、どうしてこんなせんべい食べてるようなときにあっさり言ってくれちゃうのよ。
 「で?」
「ん、で、恋じゃないなら……その、愛か? って思って、愛する人なら「愛人」?……と、ここでつまずいたわけだ」
 ああ、なるほど。言いたいことは分かったわよ。でもどうしてそういう台詞を、もう少しシチュエーションを選んで言ってくれないの。「愛してる」なんて、あんたはほとんど言ってくれないのに。(あたしだって、本人目の前にしてはなかなか言わないけど。)
 そういうこと告白するなら、もう少し場所と場合を選んで欲しいものだわ。
 「やっぱさ、アンナがオイラの愛人、とか言ったら、何か変だろ?」
「別に愛人イコール浮気相手って決まってるわけじゃないじゃない。何故かその使われ方が多いだけで。愛する人のことだって愛人よ」
「そうなんか?」
「まぁ響きがどうしてもいかがわしいけど」
「おお」
 ふたりで妙に同意してしまう。
 やはり愛されていても、愛人という響きはしっくり来ないわね……。
 「そもそも、あんた何であたしたちのこと考えたの?」
「いや、まん太に「君たちの関係は何なのさ?」とか突っ込まれたんよ」
 あの男…あたし達の関係にケチ付ける気かしら。腹立たしい。
「聞かれてつまっちまったんよな。オイラたちって何なんだろうな〜って」
「もう、何だっていいわよ」
 あんたが愛してくれるあたしなら、どんなかこいも名称も必要ないわ。愛しあう事実があるなら、それがあたしたち。
 「まぁ、あえて言うなら「あいびと」ね。こいびとじゃないならあいびと」
「んな言葉あんのか」
「あるわけないじゃない」
 あたしの言葉に、葉は軽くこける。
「だから言ったでしょ、何だっていいのよ。まん太のやつが何を言おうとね」
「うい…」
「あんたが愛してるって言ってくれたから、あたしはそれだけでいいの」
「う……」
 葉の顔は赤くなる。
 「べ、別にオイラ、愛してるなんていってないぞ」
「言ったも同然じゃないのよ」
「でも言ってない」
「この期に及んで照れてるわけ?」
「そっ、そんなことねぇ」
 赤い顔で否定したって、説得力ないわよ。
 「なに、じゃああたしのこと愛してないの?」
「そんなわけねぇだろ」
 即答した葉に、あたしが驚いた。そんなあたしの顔を見て、葉が自分に驚いていた。
 「いや…今のはナシ。オイラ何も言ってない」
 まだ否定する気? あたしは腹を立てればいいのか、喜べばいいのかわからない。
 このままじゃ絶対、葉ははぐらかす。そうはいくもんですか。
 「ねぇ? 葉……」
 名前を呼んで、上目遣いに葉を見上げる。なるべく甘えた声で。葉に近づいて、首にゆっくりと手を回す。
「あたしのこと、どう思ってる?」
「う…」
 葉はあたしの策なんかお見通しでしょうけど、それでも顔を真っ赤にして、あたしを見つめていた。
 葉の手がそろそろとあたしの腰を這う。くすぐったくて身をよじれば、葉はあたしをかき抱いてきた。
 耳元で囁かれる、あたしの望んだ言葉。
 そのまま世界はひっくりかえって、あたしは葉の下敷きに。
 あたしは言葉だけで良かったのだけど、葉はどうやら行為で示したいらしい。
 どうせならめいっぱい示して頂戴? あたしの愛しい人。










懺悔

素朴な私の疑問。
何故「愛人」は浮気相手に使われるのか。
葉とアンナの関係は、いったい何と呼べばいいのか。(笑)

葉はあんなこと言ってますが、わたしは許嫁って響き大好きですよ!!(笑)
夫婦って呼び方だって大好き。(と言うよりそうとしか呼んでいない。)


浮気していないかとか、疑ったりするアンナも可愛くて良いかなーと。
最近じゃ浮気なんてあるわけない、とすっごい自信を持ってくれてそうなので。(それはそれで素敵。)





謝意

この話は512HITのキリリクをして下さった魁さまに捧げさせて頂きますv
遅くなって申し訳ありません。
初期の葉とアンナのイメージなので(本当かよ)、微妙にアンナ×葉的になってしまいました…。
葉アンラブラブものというリクだったのに、アン葉ラブラブものになってしまってごめんなさい;;
しかも必要以上にラブラブでアンナ攻め……(笑)。すみません。
こんなので良ければ貰ってやって下さいませv

ではでは、本当にありがとうございました! これからもよろしくお願いします。